【vs山形】山口の星、覚醒間近

河野孝汰が待望のセンターフォワード起用されるようになって2試合目。前線から中盤にかけて動きながら局面に絡むことでチーム全体が活性化し、試合を前向きに支配することに成功し、本人も先制点を挙げる──そんな大車輪の活躍を魅せた山口の星は、早くもプロ5年目にさしかかる今シーズンいよいよ覚醒間近まで来たでしょうか。

2023/4/29 第12節 モンテディオ山形 | レノファ山口FC

 

東京からは新幹線で一眠り、関東在住レノファサポーターにとって近郊アウェイと言ってもよい山形は、初夏の陽気に恵まれた観戦日和。
NDソフトスタジアムは公共交通機関でのアクセスが絶望的に近く、シャトルバスや近くまでくる便利な路線バスのようなものは存在せず、鈍行列車は新幹線との接続が最悪とあって、6000台の駐車場を活かしたマイカーアクセスが主な交通手段のようです。ビジター客にとってはともかく、地元のサポーターからするとむしろ地方のモビリティを考えるとマイカーアクセスに全振りしていることは個人的には十分に理解ができるものです。
ゴールデンウィーク初日とあって客足は上々らしく、非常に多くの出店があったスタグルも行列ばかりでした。

アルプススタンドのように背の高いゴール裏は上の方までかなりの埋まり具合。この試合は6700人ほどの観客数でしたがそれだけ入るとこれだけ埋まるんですね。試合中、おそらく山形の象徴的なチャント「PARK」が2回ほど歌われていましたが、その声量は反対側のスタンドでこだましたのが聞こえるほどの凄まじいものがあって衝撃的でした。あれは間違いなくピッチの中にいる選手にとっても足を動かす力になっているはず。やはりJの大先輩だなと思いました。

 

 

第10節 ホーム清水戦での大敗をうけてアイデンティティクライシスに陥ったレノファは、翌週の第11節 岡山戦から「自分たちのサッカーを取り戻す戦い」と位置づけ、とくに最終ラインを中心にメンバー構成をそれまでと大きく変えた戦いを続けています。

岡山戦で一定の手応えを得たCB前・ヘナン両選手の安定性を基軸に、前線の機動力を活かした人もボールも動くサッカーに回帰したレノファ。特にこの一連の戦いでセンターフォワードに河野孝汰選手を初めて起用し、ボール保持力と前を向く能力に長けた五十嵐太陽選手と縦関係や横関係でいい距離感で配置。前線が入れ替わりながら動くことでフリーな瞬間をつくり、そこに前選手・ヘナン選手からのボールスピードの鋭い縦パスを通すことで少しずつ相手のズレを生み出しながらサイドも活用して前進する、そんな非常に個人の特徴をシステムをよく組み込んだような戦いを志向しているようです。

この山形戦の前半はそのような戦いぶりを存分に発揮してくれました。
早い時間帯にデザインされたセットプレーから先制(とその後すぐにおそらく狙い通りの展開を突かれて失点)と試合は早めに動きましたが、そんな中でも前半は概ね試合を支配。ボールを安定的に保持しながら縦方向に非常にスムーズに流すことができていたように感じます。
特に効いていたのはヘナン選手の安定したフィード、矢島選手の鋭いボール奪取、そして五十嵐太陽選手と河野孝汰選手の関係性だったように感じます。
キーマンでもあった河野選手は前線を縦横無尽に動きながら受けてはたくようなプレーを見せつつ、裏への動き出しなども見せるなど、中盤から前線にかけて膠着状態に陥りがちの傾向が強かったレノファの攻撃陣においてとてもいいアクセントになりつつあります。また、守備時にはファーストディフェンダーとしてちゃんと後ろの状況を確認しながら動き始め、相手のコースを切るような動き方でのプレスを心がけていた様子。霜田監督時代に前線の選手を中心にチーム全体にしっかり仕込んでいたような連動した前プレの形が久々に見えたように感じます。
総じて中央の縦に一本しっかりとした軸が通っていたように感じられたのが、チームが安定したなと感じる一番の要因だったでしょうか。

前半の先制点で今シーズン2点目を挙げた河野選手。この試合のように攻撃の起点になる、ファーストディフェンダーとしての動き、そしてセンターフォワードとして得点を取る。いよいよチームの形にフィットしてきた河野選手が得点を量産するようになるまで間近という感じがあります。

 

で、そんな先制点の後にも、五十嵐太陽選手の素晴らしい抜け出しなど決めきるべきチャンスも複数ありましたが決めきれず前半終了。
前半は完全に支配したが後半はそんなに上手いことはやらせてくれないだろう、それだけに追加点が欲しかった……と懸念していましたが、果たしてそのとおり、山形はハーフタイムでしっかり修正してきたのか前半のような形にはなりませんでした。

それでも五十嵐太陽選手・河野孝汰選手などはコンスタントにゴール近くでプレーに絡み、シュートを打つシーンも見せてくれました。

 

終盤に5枚目のカードとして投入された山形のデラトーレ選手がすぐに筋肉系の怪我で退場したことでレノファは数的優位となりおよそ10分間に渡って攻撃を繰り出しますが、その優位を十分に活かしきることができず、90分の総括としては試合を概ね支配しながらも決め手を欠き2試合連続の1-1ドローという形に終わりました。

アウェイで勝点1自体は上々ながら、先制後の失点が少し軽く感じたこと、何より前半を通じてあの出来が出来ているなら追加点を挙げて勝って帰ればければいけないという内容だったこともあって、悔しさの残る結果となりました。

このゴールデンウィーク3連戦は中3日で山形→山口→群馬と長距離の移動が続く難しい状況ですが、コンディションを回復し、またターンオーバーを活用して人もボールも動くサッカーを継続して勝点3を目指してほしいと思います。

 


 

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